2008年 04月 16日
吟遊詩人 |
2000年の4月9日夜。
欅ガルテンのテラス側に置かれた椅子にちょこんと座った
一人の中年の髭のおじさんがしわがれた声でギター片手に
唄っていた。
曲の合間にボソボソと喋る古典落語のようなMCに客席はどっと沸いた。
まるで彫刻のようなほりの深くて白い顔は途中高い音域になると
みるみるピンク色に染まっていった。
とても美しい顔だと思った。
演奏が終わった後カウンターに移り、酒を交えて
夜の更けるまで話し込んだ。
その夜は店の2階の質素なゲストルームに泊っていただいた。
朝起きると「まるで狐につままれたような一夜だったね。」と言われた。
明かりひとつ無い漆黒の外の暗闇に驚いたのだという。
もしかするとこんな人里離れた小さな会場で唄うはめになったことを
皮肉られたのかもしれない。
それからまた僕たちはあたりまえのように酒を取り出し只管グラスを傾け
とりとめのない話の続きをした。
小腹がすくと厨房に入り冷蔵庫にあった茄子とトマトとチーズでピザのようなものを
作ってくれた。
自宅でよく奥さんに作ってあげるという自信作の手料理だった。
それを肴にビールと水割りでまた話が盛り上がった。
そうして昼過ぎまでとりとめなく飲み、話し、やがて時間が来て
新幹線の駅までお見送りした。
ホームの階段をギターケース片手にフラフラしながらの足取りで上る後姿を
心配しながら見送った。
感謝の言葉とまたいつかの声を掛けたがこちらを見ずに手だけでバイバイをして
改札口に消えていった。
いつの日かあの歌声と手料理をまた一緒にという願いはとうとう叶うことはなかった。
今日4月16日は旅先で倒れそのまま帰らぬ人となった高田渡さんの三回忌命日だ。
水割り片手に「ブラザー軒」を聴きながら。
欅ガルテンのテラス側に置かれた椅子にちょこんと座った
一人の中年の髭のおじさんがしわがれた声でギター片手に
唄っていた。
曲の合間にボソボソと喋る古典落語のようなMCに客席はどっと沸いた。
まるで彫刻のようなほりの深くて白い顔は途中高い音域になると
みるみるピンク色に染まっていった。
とても美しい顔だと思った。
演奏が終わった後カウンターに移り、酒を交えて
夜の更けるまで話し込んだ。
その夜は店の2階の質素なゲストルームに泊っていただいた。
朝起きると「まるで狐につままれたような一夜だったね。」と言われた。
明かりひとつ無い漆黒の外の暗闇に驚いたのだという。
もしかするとこんな人里離れた小さな会場で唄うはめになったことを
皮肉られたのかもしれない。
それからまた僕たちはあたりまえのように酒を取り出し只管グラスを傾け
とりとめのない話の続きをした。
小腹がすくと厨房に入り冷蔵庫にあった茄子とトマトとチーズでピザのようなものを
作ってくれた。
自宅でよく奥さんに作ってあげるという自信作の手料理だった。
それを肴にビールと水割りでまた話が盛り上がった。
そうして昼過ぎまでとりとめなく飲み、話し、やがて時間が来て
新幹線の駅までお見送りした。
ホームの階段をギターケース片手にフラフラしながらの足取りで上る後姿を
心配しながら見送った。
感謝の言葉とまたいつかの声を掛けたがこちらを見ずに手だけでバイバイをして
改札口に消えていった。
いつの日かあの歌声と手料理をまた一緒にという願いはとうとう叶うことはなかった。
今日4月16日は旅先で倒れそのまま帰らぬ人となった高田渡さんの三回忌命日だ。

水割り片手に「ブラザー軒」を聴きながら。
by rinken-style
| 2008-04-16 23:29
| 本・音楽・映画・アート