2008年 07月 17日
川ガキ |
岩牡蠣は海で獲れる。
川ガキは川に棲息した。
子供の頃、夏休み前の放課後は家に帰ると一目散に友人たちと川に向かった。
夏休み前の水泳は校則で禁止されていたので親の目を盗んでこっそりと泳ぐのが
常だった。(とはいえ、どこの親もそんなことにいちいち気を使うような時代ではなかった。)
川に着くと深い淵に石を投げ込み底に沈んだ石を拾い上げるという単純な遊びに興じた。
大きく息を吸い込み一気に淵の底に潜っていく。
耳がキンと鳴り、口の横から泡が漏れていく。
その泡が次第に大きくなり川面に上がっていくのが見えた。
川の底にはエンコウと呼ばれる川の主が住んでおり泳いでいる子供の足をひっぱて
引きずり込むのだと高学年の子に言われていた。
川底の石を掴むと川底を蹴って少しでも早く水面に上がりたかった。
そうしないと岩陰からエンコウの手が伸びてきそうな気がした。
怖さを友達に悟られるのは恥ずかしいことだった。
そうして何度も何度も石を投げ入れては僕たちは潜った。
夕方が近づくと次第に体が冷え、お互いの唇の青さを見て慌てて岸に上がり
太陽の熱で温まっていた大きな岩に腹這いになって暖をとった。
白いつるりとした岩はとても柔らかな暖かさで母親に抱かれているような
気がした。
体の水が岩に流れ温まった水は不思議な匂いがした。
眼を瞑るとオレンジ色の光景が瞼に拡がった。
少しうとうとして体が温まると今度は浅瀬のほうに足を伸ばし
やっと持ち上げられるほどの石を拾って水の中の岩に向けて
投げ下ろした。
しばらくすると小さな魚がフラフラとしながら浮き上がってくる。
「岩てぎ」というやり方の魚の取り方だ。
石の衝撃で魚が脳震盪を起こして浮いてくるのだった。
川を覗き込んでいた僕の頭に友人の投げた石が頭を直撃したことがあった。
幸いに打ち所が良かったのか、僕の頭が石頭だったのか大事には至らず、
僕は急いで家に帰って隠れて泣いていた。
心配して家に来た友人に悪態をついて帰らせたことをいまだもって友人も覚えていて
酒の席で冷やかされるのだ。
そんな風にして暑い夏は笑ったり泣いたりの川遊びが僕たちの唯一の楽しみだった。
川ガキは今も棲息しているのだろうか。あまり見たことが無い。
潜って遊んだ可部の淵。
川ガキは川に棲息した。
子供の頃、夏休み前の放課後は家に帰ると一目散に友人たちと川に向かった。
夏休み前の水泳は校則で禁止されていたので親の目を盗んでこっそりと泳ぐのが
常だった。(とはいえ、どこの親もそんなことにいちいち気を使うような時代ではなかった。)
川に着くと深い淵に石を投げ込み底に沈んだ石を拾い上げるという単純な遊びに興じた。
大きく息を吸い込み一気に淵の底に潜っていく。
耳がキンと鳴り、口の横から泡が漏れていく。
その泡が次第に大きくなり川面に上がっていくのが見えた。
川の底にはエンコウと呼ばれる川の主が住んでおり泳いでいる子供の足をひっぱて
引きずり込むのだと高学年の子に言われていた。
川底の石を掴むと川底を蹴って少しでも早く水面に上がりたかった。
そうしないと岩陰からエンコウの手が伸びてきそうな気がした。
怖さを友達に悟られるのは恥ずかしいことだった。
そうして何度も何度も石を投げ入れては僕たちは潜った。
夕方が近づくと次第に体が冷え、お互いの唇の青さを見て慌てて岸に上がり
太陽の熱で温まっていた大きな岩に腹這いになって暖をとった。
白いつるりとした岩はとても柔らかな暖かさで母親に抱かれているような
気がした。
体の水が岩に流れ温まった水は不思議な匂いがした。
眼を瞑るとオレンジ色の光景が瞼に拡がった。
少しうとうとして体が温まると今度は浅瀬のほうに足を伸ばし
やっと持ち上げられるほどの石を拾って水の中の岩に向けて
投げ下ろした。
しばらくすると小さな魚がフラフラとしながら浮き上がってくる。
「岩てぎ」というやり方の魚の取り方だ。
石の衝撃で魚が脳震盪を起こして浮いてくるのだった。
川を覗き込んでいた僕の頭に友人の投げた石が頭を直撃したことがあった。
幸いに打ち所が良かったのか、僕の頭が石頭だったのか大事には至らず、
僕は急いで家に帰って隠れて泣いていた。
心配して家に来た友人に悪態をついて帰らせたことをいまだもって友人も覚えていて
酒の席で冷やかされるのだ。
そんな風にして暑い夏は笑ったり泣いたりの川遊びが僕たちの唯一の楽しみだった。
川ガキは今も棲息しているのだろうか。あまり見たことが無い。
潜って遊んだ可部の淵。
by rinken-style
| 2008-07-17 22:31
| 高津川ラプソディ