2008年 08月 30日
飛び込み |
訪問営業のことでも、ましてや厭世自死の話でもない。
川遊びでの究極の通過儀礼といえば「飛込み」である。
まず最初のうちは1メートル程度の高さの岩からザブンと川面に飛び込む。
これはなかなか気持ちがいい。
脚を大きく拡げて飛び込んだり、慣れてくると頭から突っ込んだり、もっと慣れてくると
宙返りしたり出来るようにもなった。
調子に乗って、時には股間を思いっきり強打して息も出来ずに河原に上がり、しばらくの間ピョンピョンとジャンプしなければならなくなるコトもあった。
一番気をつけなくてはならないのは頭から突っ込んだ瞬間、水泳パンツが脱げてしまうことだ。
周りでは女子も泳いでいる。
半分お尻が見えてキャーキャー言われる事があった。
真っ黒に日焼けしているがパンツのところだけは焼けずに白く残っている。
友人のパンツが脱げたのを水の中から見たことがあったが、揺らめく碧の中で
白いお尻が妙に艶めしかった。
その淵で一番高い崖は6mくらいはあっただろうか。
そこから飛込みが出来ないと一人前には見てもらえなかった。
切り立った崖の上に上がると深い緑色をした水面がはるか下に見えた。
友人たちは奇声を上げながら次々に飛び込んでいく。
水中に姿が見えなくなってどうしたのだろうと心配する頃にいきなり
水面に顔が覘く。
そして「はよー、飛べやー」と水面から僕に向かって叫んだ。
ヨシッと心の中で叫んで足を蹴ろうと思うのだがどうしても踏み出せない。
しばらくしゃがみ込んだり、意を決して立ち上がったりを繰り返したものの
時間が経てば経つほど飛べなくなってしまうのだった。
友達は諦めたように泳ぎに熱中し始めていた。
恐怖心と悔しさが交錯し、僕は半べそになりながらじっと下を見つめていた。
仕方がないので一段下の岩場まで下がり、今度は間髪を入れずに飛び込んだ。
風が顔を切っていく。
とても永い時間、浮いていたような気がした。
どこまで落ちていくんだろうと思った瞬間、鼻の中に水が入りツーンと頭が痺れてくる。
顔の周りじゅうに白い泡が纏わりつく。
大急ぎで水面に顔を出した。耳の中にまで水が入って頭の中がゴワーンゴワーンと
鳴った。不思議な感覚だった。
耳栓などというものが無かったので泳ぐ前には指に唾をたっぷり付けて耳の中に
入れた。そうすると不思議に耳の中に水が入って来ないのだった。
鼻を掴んで飛ぶ代わりに近くの木の葉っぱを一枚もぎ取りそれを口にくわえて飛んだ。
風圧で葉っぱが上に上がり自然と鼻の穴を塞いでくれるのだ。
年上の子達がやっているのを見よう見まねで僕たちも自然と術を学んでいた。
少しづつ度胸がつき、夏休みの終わりには一番上の段から何とか飛べるようになっていた。
ほんの少しだけ大人の仲間入りができたような気分がした。
中学生の子らはもっと高い,淵の上に架かる国道の橋の欄干から飛び込んでいた。
来年の夏は否応が無く「橋の上」が待っているのだった。
晩夏。12歳の夏が終わろうとしていた。
川遊びでの究極の通過儀礼といえば「飛込み」である。
まず最初のうちは1メートル程度の高さの岩からザブンと川面に飛び込む。
これはなかなか気持ちがいい。
脚を大きく拡げて飛び込んだり、慣れてくると頭から突っ込んだり、もっと慣れてくると
宙返りしたり出来るようにもなった。
調子に乗って、時には股間を思いっきり強打して息も出来ずに河原に上がり、しばらくの間ピョンピョンとジャンプしなければならなくなるコトもあった。
一番気をつけなくてはならないのは頭から突っ込んだ瞬間、水泳パンツが脱げてしまうことだ。
周りでは女子も泳いでいる。
半分お尻が見えてキャーキャー言われる事があった。
真っ黒に日焼けしているがパンツのところだけは焼けずに白く残っている。
友人のパンツが脱げたのを水の中から見たことがあったが、揺らめく碧の中で
白いお尻が妙に艶めしかった。
その淵で一番高い崖は6mくらいはあっただろうか。
そこから飛込みが出来ないと一人前には見てもらえなかった。
切り立った崖の上に上がると深い緑色をした水面がはるか下に見えた。
友人たちは奇声を上げながら次々に飛び込んでいく。
水中に姿が見えなくなってどうしたのだろうと心配する頃にいきなり
水面に顔が覘く。
そして「はよー、飛べやー」と水面から僕に向かって叫んだ。
ヨシッと心の中で叫んで足を蹴ろうと思うのだがどうしても踏み出せない。
しばらくしゃがみ込んだり、意を決して立ち上がったりを繰り返したものの
時間が経てば経つほど飛べなくなってしまうのだった。
友達は諦めたように泳ぎに熱中し始めていた。
恐怖心と悔しさが交錯し、僕は半べそになりながらじっと下を見つめていた。
仕方がないので一段下の岩場まで下がり、今度は間髪を入れずに飛び込んだ。
風が顔を切っていく。
とても永い時間、浮いていたような気がした。
どこまで落ちていくんだろうと思った瞬間、鼻の中に水が入りツーンと頭が痺れてくる。
顔の周りじゅうに白い泡が纏わりつく。
大急ぎで水面に顔を出した。耳の中にまで水が入って頭の中がゴワーンゴワーンと
鳴った。不思議な感覚だった。
耳栓などというものが無かったので泳ぐ前には指に唾をたっぷり付けて耳の中に
入れた。そうすると不思議に耳の中に水が入って来ないのだった。
鼻を掴んで飛ぶ代わりに近くの木の葉っぱを一枚もぎ取りそれを口にくわえて飛んだ。
風圧で葉っぱが上に上がり自然と鼻の穴を塞いでくれるのだ。
年上の子達がやっているのを見よう見まねで僕たちも自然と術を学んでいた。
少しづつ度胸がつき、夏休みの終わりには一番上の段から何とか飛べるようになっていた。
ほんの少しだけ大人の仲間入りができたような気分がした。
中学生の子らはもっと高い,淵の上に架かる国道の橋の欄干から飛び込んでいた。
来年の夏は否応が無く「橋の上」が待っているのだった。
晩夏。12歳の夏が終わろうとしていた。
by rinken-style
| 2008-08-30 06:06
| 高津川ラプソディ